親が所有する不動産の売却を検討していても、認知症等で本人の「判断能力」がなくなっている場合には、子といえども勝手に売却することはできません。
今回は認知症の親に代わって不動産を売却する方法や注意点について解説します。
認知症の親に代わって不動産を売却する方法
認知症の親の不動産を売却する場合、「成年後見制度」を利用する必要があります。
「成年後見制度」とは、判断能力が十分でない人に代わって「成年後見人」が契約の締結や財産管理等をおこなう制度です。
本人に明確な判断能力があれば「任意後見制度」、すでに判断能力が十分でない場合には、「法定後見制度」によって後見人を選定します。
法定後見人になれるのは、親族、弁護士、司法書士、社会福祉士、福祉関係の法人等で、未成年者、破産者等は後見人になることができません。
「成年後見制度」の申立て必要書類(東京家庭裁判所の場合)
郵送の場合、A4版が入る角型2号サイズの封筒に切手を貼り、名前と住所を書いたものと「成年後見の申立書類一式送付希望」と書いた覚書等を入れて、家庭裁判所に送付します。
申立書類
●申立書
●申立事情説明書
●親族関係図
●本人の財産目録及びその資料(不動産登記簿謄本:全部事項証明書、預貯金通帳コピー等)
●本人の収支状況報告書及びその資料(領収書コピー等)
●後見人等候補者事情説明書
●親族の同意書(家庭裁判所窓口またはHPからダウンロード)
添付書類(詳細は各裁判所に確認してください)
●本人及び後見人等候補者の戸籍謄本と住民票
●診断書(成年後見用)・診断書付票
●本人が登記されていないことの証明書
※申請には、申請人と本人との関係を示す両者の戸籍謄本が必要
費用(申立書と一緒に納付)
●収入印紙 申立費用:800円 登記費用:2,600円
●郵便切手 後見・保佐・補助いずれも3,200円(内訳指定あり)
●鑑定費用 医師への鑑定料7~9万円程度
法定後見制度を使って不動産を売却するための手順
●家庭裁判所に「成年後見制度開始」の審判申立て
●家庭裁判所が"医師による鑑定が必要"と判断した場合、医師による判断能力評価によって診断書作成
●後見人の選定と審判の確定
申立てから審判まで通常2か月くらいかかり、審判確定後に家庭裁判所が法定後見登記をおこないます。
●不動産会社と契約し売却に向けての活動開始
●成年後見人が本人に代わって買主と売買契約締結
●家庭裁判所の許可
売却資金の使い道等について詳細な記載が必要です。
●売買代金の精算、所有権移転登記
成年後見人として認知症の親の不動産を売却する際の注意点
●自由に売却できるわけではない
成年後見人に選任されても、親の不動産を自由に売却できるわけではありません。
本人の不利益につながる可能性があるため、以下のケースでは注意が必要です。
●居住用不動産:家庭裁判所の許可が必要(入院・入所中の場合の自宅も含む)
●非居住用不動産:家庭裁判所の許可は不要だが、売却する理由や価格に制限
安易に売買契約書に署名捺印してしまうと、契約自体が無効になる恐れがあるので注意しましょう。
●ほかの相続人にも事前に相談する
親の不動産売却については、後々トラブルにならないようにすべての相続予定者に事前に相談しましょう。